里親への道 (2)
としくんの通う小学校で飼われているウサギが、昨年12月22日に赤ちゃんを出産。
自分と同じ誕生日に産まれた子ウサギの里親が募集されているのを知り、育てたいと名乗りを挙げたとしくん。
希望者が複数いたので抽選で決まることに。
当たりますように、当たりますようにと、念仏を唱えるようにして登校したとしくん。
見事、当選。
帰宅したとしくんは、顔を上気させ、瞳はキラキラ。荒い息遣い。自然にスキップ。
身体全体から嬉しさが伝わってくる。
よかったね。嬉しいね。
としくんの喜びが私に向かってあふれてきて、私も幸せな気持ち。としくんを抱きしめ、久々に高い高いの抱っこ。
翌日は、としくんとペットショップにウサギグッズを買いに行き、新しい家族を迎え入れる準備。
次の日は、いよいよ新しい家族とご対面。指定された16時に、としくんと小学校へ。
受け取りに来た子どもや親を前に、神妙な顔をした飼育担当の先生から「命」のお話。
そうだ、確かに、ぬいぐるみをもらうわけじゃない。「命」を預かるのだと、先生の静かで熱い口調に耳を傾けながら、同じく神妙な気持ちになる。
てのひらに乗る大きさの、生後1カ月のかわいらしい子ウサギが4羽。ふわふわ、やわらかく温かい。
このなんとも愛らしい赤ちゃんウサギに目がくぎ付けになっている私たちに、
あと2カ月ほどで大人になるんですよ、と担当の先生はくぎを刺す。
そして、教室を出て校庭のはじにある小屋に私たちをいざない、立派に成長した親ウサギたちを見せてくれる。
先生は、その親ウサギたちの水を替えたり、なでたり、世話をしながら、自分は5年も飼育を担当していること、ウサギを不注意で死なせてしまったときは悔し涙がとまらなかったことをポツポツと話してくれる。
帰り際、それまであまり笑顔を見せなかった先生が、
「新しい家族ができた今日は子ウサギにとって第二の誕生日かもしれないな」と言って、少し恥ずかしそうな笑顔を浮かべる。
すかさず、それを聞いたとしくんが、「ぼくとウサギちゃんって同じ誕生日!」と言うと、先生はちょっと目を見開いて、「ああ、そうだったよね。電話したときにそう言ってたね」と言って、今度は大きく笑ってうなずく。
小学校から連れて帰ってきた子ウサギを、としくんは目を離すことなくじっと見つめ、唐突に「ウサギの名前は、“フレッド”!」と命名(オスかメスかはまだ不明だけれど)。
水や餌をやったり、そっとなでたりした後、これまた唐突にミシンを取り出し、フレッドの衣服を手作り。
ミシンを使いながら、
「今年はよしくんのほかに、ぼくにまた家族ができて、ちょうどウサギ年に、ぼくと同じ誕生日のウサギの里親に抽選で当たるなんて、ぼくはなんてラッキーなんだろう!」とつぶやき、感極まるとしくん。
フレッドの服が出来上がると、「もう年賀状の“お年玉”に当たらなくても全然くやしくないよ〜」と言いながら、いそいそと毎年恒例の年賀状の当選番号チェック。
そうは言っても、つい「当たれ〜、当たれ〜」と口にしながら年賀状ハガキを一枚一枚確認。
「あっ、フレッドに似ている!」ウサギ年ゆえに年賀状にはウサギのイラストや写真がたくさん。
今年もやっぱり“切手シート”しか当たらなかったけれど、「ま、いいよね」と私ととしくんは顔を見合わしてニッコリ。
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