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2011年2月 3日 (木)

不死の薬 (1)

2月に入って、闘病中の父の容体が思わしくない。

ずっとそばで看病を続ける母。

私は毎日のように実家に電話をかけ、明るく元気に母を励まし、気遣い、支える。

私が二人を支えていた … つもりだった。

ある日、

「 笑顔がいちばんの薬。きょうも、笑顔ですごしてね!」

そんな私の言葉を聞いて、

「 いつも笑顔だよ。心では毎日泣いているけどね」

いつもの明るい口調で、さらっと答えた母の言葉に私は動揺。

電話を切ったあとも、母の言葉が耳から離れず、「心では毎日泣いている」というセリフが繰り返し頭の中によみがえる。

母を、父を、支えていたはずの自分は、

「電話をありがとう。こちらは大丈夫だよ」

という親の言葉で、じつは支えてもらっていたのだと今更ながら気づく …。

元気に学校から帰って来たとしくんが、

「お母さん、なんか怒っているような顔。ぼく、何かした?」

心配そうに尋ねる。

仕事から帰って来た夫も、

「今日、何かあった?」

怪訝な顔。

家族にもあっけなく気づかれる私の「異変」。

自分が母の一言に、こんなにもあっさり動揺してしまっていることに、愕然、呆然。

母が、父に悟られないように、どんなに頑張っているか思い知る。

ふと、

もう母は、父と二人で富士の家で過ごすことはないのかしら・・・

昨年が、最後の思い出になってしまうのかしら・・・

そんな思いが

心をよぎる。

と、同時に、そんなことはない。

今年も、富士の瑞々しい新緑をいっしょに見るのだ、

母は父との思い出をさらに重ねていくのだ、

と、猛々しい思いも同時に込み上がる。

冬はどこもかしこも凍結して、5月になるまでは行けない富士の家。

どうか、父を待っていてほしい。

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